一日を通して聞く力の実現
オーティコンは、聞こえに問題を抱えた人々にかかる負担や、聞き取りに使われる認知的エネルギーの消費を軽減できるものは何かをつきとめるために、10年以上もの間、難聴が引き起こす認知的負荷に関する研究を続けてきました*1。
この研究を通じて生み出されたのが、聞き取りや音の処理にかかる負担を、補聴器が代わりに担うためのアルゴリズムです。
臨床的応用が可能で揺らぐことのないこのアルゴリズムにより、認知的負荷を軽減して、認知資源を難聴による負担から解き放ち、聞こえの問題に囚われることなく、聞くことを最大限に楽しみながら、一日を通して聞く力を高めることを目指します。
時間帯によって変化する現代のユーザーのニーズ。 補聴器のもつ機能が、各状況に適切に対処し、全体的な負荷を軽減することで、 一日を通して聞き取る力を保つことを可能にする。
ユーザーが一日を通して精力的に聞き取りができるようにするには、これまで以上に 広い視野を持ち、一人ひとりの能力、特徴、好みを捉えることが必要です。 このアプローチによって、聞く力を最大限に高める機能が、一日中最適な聞き取りを実現します。
研究調査結果
*1 補聴器装用と認知機能
難聴者がまず必要とするのは、歪みのないスピーチ・キューの可聴性にあります。 補聴器で非可聴性の(聞きとることのできない)音声を増幅すると、特に騒音の少ない環境では、音声信号の内部(中枢)構造をより鮮明にして、ことばの意味を正確に捉えることができます。この状況では、非可聴性の音声は、その音を解読するために、脳の資源を多く必要(顕在的処理)とします。その一方で増幅をして、その同じ音信号に可聴性が得られる(聞こえる)と、今度は楽に速く、そして正確かつ自動的にことばを理解(潜在的処理)することができます。したがって、補聴器の開発における明確な目標とは、聞き手の作業記憶(ワーキングメモリー)資源にかかる負担の軽減に直結します。スピーチ・キューを最大限に保持することで、努力を要する作業記憶(ワーキングメモリー)処理を潜在的処理に変え、また人工音を最小限に抑えることで、作業記憶資源の使用を活発化させます。
T. Lunner (2003)