11月29日に都内のデンマーク大使公邸にて、デンマーク大使館が主催する「Designing For Health (デザイニング・フォー・ヘルス)2019」が開催されオーティコン補聴器も参加しました。
最近、日本とデンマークをはじめとするスカンジナビア地域では、デザインへのアプローチにおける数々の類似点があることが話題となっています。その一つがどちらも使う人、住む人など、まず人のことから考える「人間主体のデザイン」というところに視点がおかれていること。今回のイベントではデンマークを代表する複数の企業が参加し、「人間主体のデザイン」を大きなテーマとして、福祉大国であるとともに、デザイン大国でもあるデンマークを発信地とする各社のヘルスケアに貢献する取り組みや製品などについて、事例発表を行いました。
弊社オーティコン補聴器は、プレジデントの木下 聡が登壇し、「人中心の聴覚ケア(Person Centered Hearing Care)とは ~聴覚ケア専門家に求められる、難聴当事者を中心とした新たなアプローチについて~ 」と題したプレゼンテーションを行いました。
難聴と脳の機能との関係を示す昨今の様々な研究結果から、聴覚ケアはヘルスケアであるとして聞こえへの注目が高まっています。補聴器や聴覚ケアの専門家に求められるユーザーの期待値は急速に変化しつつあり、聞こえをサポートする補聴器とユーザーをつなぐために、聴覚ケア専門家の役割においてデザイン思考を取り入れる重要性が高まっています。
プレゼンテーションでは、デザイン思考の一つとしてヘルスケアの領域で注目されつつある「Personal Centered Care (PCC:人中心のケア)」について、北欧や北米などを中心にクリニックや補聴器販売店などで採用されはじめている「PCC」の概念に基づき開発された、デンマークのイーダ研究所のカウンセリングツールについても紹介しました。
イーダ研究所におけるPPCとは、難聴者を中心におき、難聴を抱える人が持つ個人の好みやニーズを尊重し、本人および家族とともにゴールの設定と意志決定を共有することで、より満足度や効果を高めた聞こえのケアを進めていこうというアプローチです。
2007年に設立されたイーダ研究所は、オーティコン補聴器とともに、聴覚の総合プロバイダーであるデマントグループの傘下にあって独立した非営利組織の研究機関として、人中心のケアに基づく聞こえのリハビリテーションに関する研究を行っています。イーダ研究所では国内外の大学や専門機関、そして各分野における有識者と共にカウンセリングツールの開発やカウンセリングプロセスの強化などを行っており、イーダ研究所が開発したツールやカウンセリング手法は全てIda Institute のホームページにおいて無償で情報提供されています。
会場の北欧デザインが紡ぎだす温かい光のなか、どのプレゼンも熱気の帯びたものとなり、白熱した雰囲気に包まれましたが、いずれの企業の発表も人への想いややさしさがあふれる内容でした。プレゼンテーションに続いて行われたレセプションでは、デンマークの伝統的な食事である黒パンにニシンの酢漬けなどのオープンサンドが並べられ、デンマークの食文化も学べる文化交流の場ともなっていました。
展示ブースでは、北欧デザインを用いた補聴器展示と、難聴の人々はどのように聴こえているのかを疑似体験いただくVR体験コーナーを設置。日頃補聴器や聞こえについて考える機会のない方々にも、弊社の取り組みをご紹介できたことをうれしく思います。