人は脳で聞く。だから脳から考える

オーティコン補聴器、世界脳週間に際してのメッセージを発信 「私たちは耳ではなく脳で聞いている」

15/03/19

2019年の3月11日~17日は「Brain Awareness Week(世界脳週間)」です。毎年3月を中心に脳科学研究の意義と認知症を含む脳の様々な疾患に対する診断、治療、予防の社会における重要性について、社会の関心や意識を高めることを目的としたさまざまな活動やキャンペーンが世界的な規模で行われています。オーティコンは、難聴に対処せずそのままにしておくことが、脳の機能と健康にどのような影響を与えるのかについて啓もうメッセージを発信します。国際的に信頼性の高い新たなエビデンスにより、未対処の難聴が認知機能の低下リスクにつながる可能性があることが示されています。

ブレインヒアリング

2019年3月8日デンマーク、コペンハーゲン発 -デンマークに本社を持ち、世界130ヵ国を超える国々と地域で製品を展開する補聴器メーカーOticon(オーティコン補聴器、以下オーティコン)は、聴覚がどのように機能し、そして脳はどのように音や言葉の意味を理解するのか、その基本的な理解のための研究を続けています。 オーティコンは20年以上にわたり難聴が脳に与える影響を研究し、その研究から生まれた聴覚技術を「BrainHearing™(ブレインヒアリング)」と名付け、製品開発への応用を進めてきました。2019年の世界脳週間において、Oticonは、未対処の難聴が脳に及ぼす影響について、これらが生活の質(QOL)へどのように深刻な変化をもたらすかをお伝えします。

私たちは一般的に、難聴を自ずと耳の問題と関連付けて考えますが、実はより良い聞こえにおける主要な役割を担っているのは脳です。耳を通じて届いた音や声の意味を理解するために、その全責任を脳が引き受けています。聴力の低下が生じると、脳は音響情報の全てを受け取ることができず、欠けた情報を補うために大きな労力を払う必要があります。そのため、話を記憶するといった本来脳が果たすべき、その他の機能に影響を与える場合があるのです。

脳は自己防衛を可能とする驚くべき器官です。難聴に直面した時、脳では音から得られる情報の欠如を他の感覚で代償すべく、時間の経過とともに再構築と呼ばれる働きが起こります*1

オーティコンデンマーク本社でオーディオロジー主監を務めるトーマスベーレンス(Thomas Behrens)は、次のように述べています。

聞こえの問題を抱えたまま過ごしている多くの方は、難聴を未対処のままにしておくことで生じる脳の変化が、人生を変えてしまう可能性をもたらすことに気付いていません。聞くためにより多くの努力を費やすことで生じる疲労や睡眠障害、社会的な孤立は脳の自然な老化プロセスを加速させ*2、そして健康全般に長期的な影響を与えます。

健康に関する様々な研究において難聴に関し、もっとも話題に上る事実の一つが、加齢による難聴と認知症の発症リスクとの相関関係です。

実際に、高く評価されている統計分析モデルを使用して、12カ国から寄せられた36の独自研究を対象に合計2万人以上の被験者を分析した最近の研究結果では、未対処の加齢性難聴を抱える人々の認知症発症リスクが約2倍であることが示唆されています*3

この強固なエビデンスは、未治療の難聴が新たなバイオマーカー(指標)となりうることを意味しています。聴覚ケア専門家は近い将来、難聴に必要な措置と認知症のリスクとを関連付けて患者に助言することができるかもしれません。また難聴があっても補聴器の装用により、会話を交わすために必要な、考えること、また言われたことを記憶に留めるといったことに多くの認知的エネルギーを使うことができることで、高齢者の認知機能低下を遅らせる可能性があることも研究によって示されています*4

未対処の難聴が脳に与える影響の例

集中力、反応、社会生活、人間関係および幸福への影響:
  •  難聴があると集中することが難しくなります。また、音に対する反応が遅くなることもあります*5。 特に騒がしい環境では、重要な脳の認知資源が音の理解を助けるために割り当てられ、結果的に集中が難しくなります。
  •  難聴に対処していない人では、舗装された道での足音や杖をつく音など、周囲の環境を理解するために必要な音の詳細情報が失われることで、70%~80% 転倒のリスクが高まり、一般的に入院につながる可能性も高いとされます*6
  •  音により伝えられる全ての情報が脳に届かないと、新しく何かを記憶することが難しくなります*7。 これは音やことばの意味を理解するために、脳は難聴の影響により欠如した音響情報を補いながら忙しく働いているためです。
  •  難聴を抱えた方の多くは、にぎやかな場所での聞こえをあきらめる傾向がみられ、また完全にそのような場所を避ける方もいます。これらは友人、同僚、家族など、人との関係を妨げる可能性もあります。残念なことに社会との距離、孤立・孤独感、抑うつ的症状などは、未対処の難聴において共通して見受けられる傾向です。
  •  社会的交流が減少すると脳は充分な刺激を得られず、認知機能の低下を引き起こす可能性がありえるとされています。こうした未対処の難聴と認知症の発症リスクを関連付ける一連のエビデンスが増えてきています*8 *9

 

トーマスベーレンスは次のように結んでいます。

難聴を効果的にケアすることが健康上のメリットにつながることを示すエビデンスはますます増加傾向にあります。世界脳週間は、まだ難聴に対処していない何百万もの人々へ向けて、脳を健康で活発に保つために聞こえをより良く保つことがいかに重要か、そして脳が健康全体を維持する上で重要な役割を果たしていることを知っていただく、絶好の機会です。

Brain Awareness Week(世界脳週間)とは

世界保健機関(WHO)の報告によると、世界中では4億6,600万人に上る人々が聞こえの問題を抱えており、この数字は今後急速に増加していくと見込まれています。「Brain Awareness Week(世界脳週間)」は、毎年3月を中心に脳科学研究の意義と認知症を含む脳の様々な疾患に対する診断、治療、予防の社会における重要性について、社会の関心や意識を高めることを目的としたさまざまな活動やキャンペーンが世界的な規模で行われています。世界脳週間は1995年に米国ニューヨーク州においてDana Alliance for Brain Initiativesによって設立され、現在Dana Foundationによって運営されています。戦略的パートナーとして、全米神経科学学会(the Society for Neuroscience)、欧州神経学会連合(the Federation of European Neuroscience Societies)などが含まれます。オーティコンはデンマーク、米国そして日本においてもこの活動に賛同しています。

*1 Sharma and Glick, (2016) - Cross-Modal Re-Organization in Clinical Populations with Hearing Loss

*2 Maharani et al., (2018) “Longitudinal Relationship Between Hearing Aid Use and Cognitive Function in Older Americans”, J. Am. Geriatrics Soc.

*3 Loughey, et al (2018). Association of Age-Related Hearing Loss with Cognitive Function, Cognitive Impairment, and Dementia: A Systematic Review and Meta-analysis.

*4 Deal, et al (2018). Incident Hearing Loss and Comorbidity. A Longitudinal Administrative Claims Study

*5 Rönnberg et al., (2013) - The Ease of Language Understanding (ELU) model: theoretical, empirical, and clinical advances

*6 Deal, et al (2018). Incident Hearing Loss and Comorbidity. A Longitudinal Administrative Claims Study

*7 Rönnberg et al., (2013) - The Ease of Language Understanding (ELU) model: theoretical, empirical, and clinical advances

*8 Amieva, (2018) -Death, Depression, Disability, and Dementia Associated with Self-reported Hearing Problems: A 25-Year Study

*9 Livingston, et al (2017). Dementia presentation, intervention, and care. The Lancet, 17:31363-6

オーティコンについて

補聴器におけるパイオニアであるオーティコン社(Oticon A/S)は、ハンス・デマントにより1904 年にデンマークに創設されました。オーティコンは世界で唯一の慈善財団が所有する補聴器会社であり、ウィリアム・デマント・ホールディング社の傘下にあります。その日本法人としてオーティコン補聴器は1973年より日本市場における製品の製造・販売を行っています。オーティコンの企業理念「ピープル・ファースト」とは、「聞こえに悩む人々を第一に考え、彼らが自由に伝えあい、自然にふるまい、そして活動的に生活できるように力づける」という信念に基づきます。オーティコンは先進のノンリニア補聴器、フルデジタル補聴器および人工知能補聴器を開発し、業界のパイオニアとして革新的な技術を難聴者とともに開拓してきました。1977年には先進技術とオージオロジー(聴覚学)を研究するエリクスホルム研究所(デンマーク)を設立、世界中から参集した様々な分野の科学者と1,000人以上のテストユーザーと共に、将来の補聴器開発に取り組んでいます。オーティコンは世界各国で補聴器をはじめ、聴覚関連機器、医療機器の製造・販売を行っています。

本件に関するお問い合わせ
  • オーティコン補聴器 (PR:木下、プロダクトマーケティング:渋谷)
  • TEL:044-543-0615/ FAX:044-543-0616/ E-mail:info@oticon.co.jp